こってりまんぴか(+半熟味玉) ¥750(+¥100)
(今日は実験的にオッサン世代の青春小説風レビューでお届け!)
朝から激しく降り続いていた雨は、夕方頃になってようやく弱まり、
深夜の新宿は、傘をさす人とささない人で意見が分かれていた。
暗めの店内には、僕の他に客が3人いた。
何やら自分の音楽性について熱く話しこんでいる。
本当に些細なことだけれど、彼らのどんぶりにはレンゲがささっていない。
最近は食券制ではない店にくると落ち着かない。
メニューを開くと、あっさりとこってりの二択を迫られる。
優柔不断な僕らに優しいネオリベラリズム。
店員に「こってりまんぴか」と発音するのが妙に恥ずかしくて、
欲しくもない味玉の注文を早口でつけたした。
出てきた豚骨スープは、すこしものたりない濃さで、
初めから大量に入ったモヤシから水分が出ているのだろう。
こってりでこの程度なら、あっさりはもっと?と思ったけれど、
おそらくスープ自体はどちらも同じ釜のものを使っていて、
この、浮いた背脂の量で、その呼称を分けているのではないだろうか。
もう一度来て試してみる気力は、モヤシと音楽性に吸い取られていった。
最近のセオリーどおりに麺についても言及するなら、
加水率のやたら高い細ウェーブ麺が、豚骨ラーメンのセオリーを破壊している。
久留米ラーメンと長浜ラーメンの融合?
何を目指しているのかよくわからない。
どんな音楽性を目指しているのか?
気付けば3人はいなくなり、
僕ひとりがカウンターでスープを啜っている。
背脂で口の中がザラザラする。
残ったモヤシをすくいきると、お金を払って外に出た。
僕が店にいる間に、深夜の新宿は、
傘をささない派が最終的な勝利を収めて平和を実現していた。
出しかけた折り畳み傘を、そっとしまった。